桜庭あさみのつぶやき

桜庭あさみの漫画のお仕事や、日常のつぶやき日記です.

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あまり言えない漫画家の原稿料の話

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Twitterのツィートで、「某大手少女漫画の新人作家の原稿料が7,000円で安い」というツィートが流れてきて…、思わず返信ツィートしてしまいそうになり、自分で押しとどめ、ブログにこっそり書く私です。

 

書きたかったのは

 

4年前に、原稿料1,000円とか3000円と言われましたよ!!

 

私が少女漫画のファンタジーでデビューした31年前に、原稿料は3,000円でしたが…

まさか漫画家27年目で、

 

いつの時代の原稿料?

 

と、電子書籍サイトから驚く原稿料を提示され、絶句したことがあります。

 

それまで描いていたレディースコミックの雑誌が、出版不況で休刊や、雑誌のほとんどが再録ばかりになり、原稿料も下げられ、ショート連載をして原稿を描いても、掲載が不定期で原稿料が定期的に入らず、

 

「もうレディースコミックには、先がない」

 

と、不定期連載を断り、広告漫画や違うジャンルに持ち込みを始めました。

 

ここ数年で電子書籍配信が大変発展してくれたおかげで、現在はお仕事は断ったり、待っていただいたりしているのですが、10年前あたりから雑誌がどこも売れ行きが非常に落ち、出版不況でした。

 

専門学校の講師もしながら、広告漫画をちびちびちと描き、レディースコミックで描いていた絵柄を矯正して変えていき、別ジャンルに持ち込み、雑誌や電子書籍サイトにも担当さんが数社つきましたが、担当さんに恵まれなかったり、

 

「連載をしてくれ」

 

というのに、上記の原稿料を提示されたりでした。

 

そのジャンルで1作も描いていない私だったので、新人作家扱いはわかり、読み切りP24ぐらいなら投稿としてもいい思い

 

「投稿なら原稿料0円でも、そのジャンルの見本1作ができるので、他誌にももっていける。

ついでに賞をとって、賞金をもらってしまえ」

まで考えていたのですが、雑誌のほうは

 

「もうプロなので、投稿されるのは困る。
かわりにP40描いてきてほしい。
のせる保証はできないですが」
と笑って、言われました。

 

そして他の電子書籍サイト2社が、原稿料を上記の1000円で読み切り、3000円で連載を言ってきました。

ロィヤルティも別につけ、高めにするとも言われましたが…、そのロィヤルティも過去作品集を自分で出しているロィヤルティよりも安かったです。

 

 

電子書籍サイトに掲載されるのであればもうお仕事になるので、そんな価格破壊みたいな原稿料では描けません。

 

それに1度決まった原稿料は大手出版社ではない限り、よほどのことがない限りあがりません。

 

なので最初の原稿料の交渉は、非常に重要です!!

 

1か月で全部自分で1本P30前後描くのがやっとなのに、1枚3000円の原稿料の連載で

毎月81,000円の収入で、生活できると思っているのでしょうか!?

 

漫画雑誌での仕事がなかった当時の私の足元を見られた原稿料の提示でした。

 

その3,000円の連載の催促がすごかったころ、今連載しているまんが王国さんや別の電子書籍サイトから数社きまして、やっとなんとか生活できる原稿料を提示をしていただき、ほっとしました^^;

 

私の別ジャンルへの持ち込み時代の4,5年前のお話です

 

 

レディースコミックの雑誌で20年間執筆していた時は、編集長から

「他社から仕事きていないよね?

 他社で仕事はしないように」

と専属のような扱いでしたが、専属料は一切もらわず

 

「出版業界が今厳しくて、人気があるのに原稿料あげられなくてごめんね」と

何度も言われ続け、自分から原稿料を上げてくれとお願いしたのは2回ほどで、かなったのは1回のみでしたが…

 

私の後からデビューされて、まだ私よりも人気をとられていない作家さんが、私より原稿料がすでに高くなっていることを直接お聞きして、衝撃を受けたこともあります。

 

その作家さんは、大手の作家さんのアシスタント経験が長い方で

2年に1度、編集長と本気で原稿料を上げる交渉をしていました

 

私より原稿料が高いはずです…。

 

それで当時も巻頭カラーでずっと連載をしており、編集長に2回目の原稿料アップを交渉したときに

 

原稿料の話を作家同士で、話をするわけがない!

 初心に戻れ!!

 

と、交渉決裂。

 

その編集部で新しい雑誌ができ、編集長からの依頼でP32の読み切りを2本描き、巻頭カラーを描いた漫画を押しのけて2本ともアンケート1位を取り、編集長から

「隔月でその雑誌に描いてくれ」

と言われたので

 

「他誌に描くので、もうこれ以上仕事は増やせません」

と、お断りしました。

 

生活するためにお金は必要ですが、作家の魂は売りたくないですね。

 

たぶん大手出版でデビューされた作家さんは、このような苦労は非常に少ないと思いますし、

 

「普通の会社でしたらだまっていても、お給料は務めた年数であがるものなのに

 それにちゃんとした実績がでているのなら、それにボーナスが出てよさそうなもの」

 

と、漫画業界をあまりにも知らず地方からでてきた元公務員の私は,思ったりしていました。

 

実力主義の漫画業界は、一般人からは想像できない業界事情ですが、寡黙に担当や出版社を信じて漫画を描くだけではなく、しっかりした交渉力、営業力、立ち回りが必要な業界です。